人間の注意と意識・無意識の解明とその応用

人間の認知機能の中でも、特に「注意」と「実行機能」に焦点をあて、心理学的なメカニズム、および、その脳神経科学的基盤の解明を行っています。行動・認知心理学実験を基礎とし、さらに眼球運動計測や脳機能計測を駆使して、脳と心のメカニズムに迫ります。

注意とは? 実行機能とは?

人間はその時々の行動の目的に適合した情報を外界から獲得し、また、目的に適合した行動を的確に実行しています。目的に合った情報を外界から選択する機能のことを「注意」、行動を目的に応じて組織化し、適切なタイミングで切り替えながら実行する機能のことを「実行機能(executive function)」と呼びます。

これら機能には、主に脳の前頭葉が関与しており、メカニズムの解明が世界中で進んでいます。また、高齢者の注意や実行機能の低下が、さまざまな日常生活上の困難をもたらしていると考えられています。

当研究室では、このよう先進的かつ日常生活上重要なテーマに対して、基礎研究と応用研究の融合という観点から、多角的な方法論でアプローチしています。

タッチパネルと眼球運動計測装置を用いた、視覚的注意と行為の関係を解明する行動実験の様子

日常生活における認知行動のメカニズムの解明と認知的インタフェース —運転場面を中心として—

自動車運転中のドライバーの認知や操作の特性や、その基盤となる脳・認知メカニズムをを解明し、運転中にスムーズな注意誘導や運転操作指示を可能とするハザード認知支援システムの開発に関する基礎的研究を行っています。

自動車運転中の認知/操作の計測と解析。自動車メーカと共同研究を実施

加齢や脳損傷に伴う認知行動の機能低下の評価と支援

加齢や脳梗塞などの後遺症によって注意機能や実行機能にどのとうな変化が生じるかを調べ、その背後にあるメカニズムの解明を行うとともに、機能低下を補償するための方策について、科学的エビデンスに基づいて検討しています。また、基礎的な研究成果をもとに高齢者にも使いやすい認知的インタフェースの開発に関する基盤的研究も行っています。

高齢者を対象とした認知実験の様子

テキスト解析による人間の心理状態の推定

言葉と人間の心理状態との関係を自然言語処理の手法を用いて明らかにする研究に取り組んでいます。

心理学的知見(人間の認知特性)の深層学習への応用

人間の認知特性を考慮して、深層学習モデルのトレーニングを効率化させる研究に取り組んでいます。

主な研究テーマ

  • 統計的機械翻訳の技術を用いた日本語のパーソナリティテストの標準化
  • 自然言語処理技術を用いた行動とパーソナリティの関係に関する社会的知識の収集・解析
  • 食事に関連したテキストからの心理状態の推定
  • 人間のオブジェクト認知における視点依存性から着想を得た深層学習画像分類のためのデータ刈り込み戦略